サステナブル容器の5つの指針とは?事業者が今こそ知っておきたい選定基準を徹底解説
持続可能な社会の実現が急務となる今、事業活動のあらゆる場面で「サステナブル」であることが求められています。中でも容器包装分野は、日常生活と密接に関わるだけでなく、資源使用や廃棄物問題と深く結びついています。
「環境に配慮した容器を使おう」と思っても、素材やデザインだけで判断してしまっていませんか?実は、サステナブルな容器には、環境省が明示する5つの明確な指針があるのです。
本記事では、この5つの指針を軸に、事業者としてどう容器を選定・導入していけばよいのか、実践的な視点で解説していきます。環境にも、企業にもプラスになる容器選びのヒントを、ぜひ掴んでください。
そもそもサステナブル容器とは何か?その定義と背景

まず最初に、「サステナブル容器」とは何を意味するのでしょうか?
サステナブル(持続可能な)容器とは、資源の有効活用や環境負荷の低減を目的として設計・製造された容器包装のことを指します。単にプラスチックを紙に置き換えるといった単純な話ではなく、「製造」「使用」「廃棄」「再利用」といったライフサイクル全体を見据えた設計が重要となります。
注目される背景
こうした容器が注目を集める背景には、いくつかの要因があります。
- SDGs(持続可能な開発目標)の広がり
特に「12.つくる責任 つかう責任」「13.気候変動に具体的な対策を」など、企業活動に直結する目標が重視されるようになっています。 - 海洋プラスチック問題やマイクロプラスチックへの関心の高まり
プラスチック容器が自然環境に悪影響を及ぼす事例が報道され、消費者の目も厳しくなってきました。 - 国内外の規制強化
日本でも「プラスチック資源循環促進法」が施行されるなど、使い捨てから脱却する流れが加速しています。
このような背景のもと、企業は「ただの環境対策」にとどまらず、持続的なブランド価値の構築やリスク回避という観点からも、サステナブル容器の導入を真剣に検討する時代に入っているのです。
指針① 過剰包装の抑制 – 容器の“ちょうどよさ”を見極める

サステナブル容器の最初の指針として掲げられているのが、「過剰包装の抑制」です。これは、必要以上に複雑で多重な包装を避け、本当に必要な最小限の容器で製品を届けることを目指す考え方です。
なぜ過剰包装が問題なのか?
過剰な包装は一見、高級感や安心感を演出しているように見えます。しかし、その一方で次のような問題を引き起こします。
- 資源の無駄遣い(紙・プラスチック・インクなど)
- 廃棄物の増加(処理費用・環境負荷が上昇)
- リサイクル困難な複合素材の増加
例えば、プラスチックと紙を貼り合わせたパッケージや、個包装が過剰なギフトセットなどは、見た目には豪華でも、分別や再利用が難しくなります。
“ちょうどいい包装”の考え方
過剰包装の抑制は、「削る」だけが目的ではありません。重要なのは、「中身を守る」「消費者に伝える」「使いやすい」といった基本機能を保ちながら、無理なくスリム化する工夫をすることです。
たとえば以下のような取り組みが注目されています。
- ラベルレスボトル(飲料メーカーなどで導入が進む)
- 簡易な段ボール・封筒パッケージの活用
- リフィル(詰め替え)を前提とした最小限容器の導入
このように、無理のない形で「容器のちょうどよさ」を見極めていくことが、事業者としてのセンスと責任につながります。
事例:無印良品のシンプル包装
無印良品では、過剰包装を避けるためにあえてシンプルな容器や外装を採用しています。視認性や保管性のバランスを取りながら、無駄のない美しいデザインで、環境意識の高い消費者から支持を集めています。
指針② 再使用可能な設計 – “使い捨て”から“循環”へ

2つ目の指針は、「再使用可能な設計」。つまり、使い捨てではなく、繰り返し使える容器を採用するという考え方です。
環境省の指針では、製品の販売や提供の場において、リユース可能な容器が優先的に検討されるべきだとされています。これは、容器そのものが循環型経済(サーキュラーエコノミー)の中で長く使われるよう設計されていることを意味します。
なぜ再使用が重要なのか?
使い捨て容器は、製造から廃棄までにかかるエネルギーと資源が非常に大きいです。一方、リユース可能な容器は、初期コストはやや高くても、長期的には環境負荷が圧倒的に低減されます。
また、再使用は単なる“エコ”にとどまらず、企業としてのブランディングや付加価値創出にもつながるのです。
導入事例:スターバックスのリユーザブルカップ
スターバックスでは、マイカップ持参による割引サービスに加え、「リユーザブルカップ」を提供しています。軽くて丈夫なカップは繰り返し使えるため、使い捨ての紙カップ削減に貢献。消費者のエコ意識を自然と高める設計になっています。
再使用設計における課題と工夫
もちろん、リユース容器には次のような課題もあります。
- 回収・洗浄の手間やコスト
- 飲食業界では衛生管理との両立
- 消費者が継続して使ってくれるかどうか
これらの課題を乗り越えるために、例えば次のような工夫が効果的です。
- 回収拠点の設置(例:スーパーや駅などでの回収)
- デポジット制度の導入(保証金を支払い、返却時に返金)
- デザイン性の高い容器で“使いたくなる”工夫
再使用できる容器は、単に環境負荷を減らすだけでなく、持続可能な顧客体験を生み出す仕組みとしても注目されています。
指針③④⑤ 材料選定・分別設計・リサイクル対応の重要性

サステナブル容器の指針のうち、後半3つ(③~⑤)は、互いに密接に関係しています。これらを一体として捉えることで、容器の「循環性の最大化」を図ることができます。
指針③:持続可能性に配慮した原材料の使用
この指針は、環境に負荷をかけにくい素材や、再生可能な資源を積極的に使うことを求めています。
具体的には以下のような素材が注目されています。
- バイオマスプラスチック(植物由来の原料を一部使用)
- 再生PET(リサイクル樹脂)
- FSC認証紙など、森林資源の持続可能な利用
ポイントは、単なる“エコ素材”の採用ではなく、ライフサイクル全体で見たときの環境負荷を減らせるかどうかです。
指針④:分別しやすい設計
分別設計とは、消費者や廃棄処理施設での分別を簡単にする工夫のことです。
たとえば以下のような工夫が推奨されます。
- 異素材の貼り合わせを避ける(プラスチック×アルミなど)
- ラベルの剥がしやすさに配慮
- 明確な分別表示をする
特に最近では、モノマテリアル(単一素材)設計が注目されており、素材ごとに分解せずにそのまま再資源化できるような設計が進められています。
指針⑤:リサイクルしやすい構造
リサイクル性の高い容器とは、「再資源化プロセスにスムーズに乗る構造」のことを指します。素材がリサイクル可能であっても、構造や汚れ、添加剤によっては再利用が困難になります。
以下のような点がリサイクル性向上につながります。
- リサイクル対応インキや接着剤の使用
- 軽量化や簡素化による資源効率化
- 内容物の洗浄が容易な形状設計
現場で活かすためには?
この3つの指針は、「素材の選定 → 設計 → 廃棄・再資源化」という流れの中で連携して初めて、サステナブルな容器設計が成立します。
つまり、製造側・販売側・消費者の行動までを見越した設計思想が必要なのです。
成功している企業は、単にエコ素材を使うだけでなく、回収スキームやリサイクルの最終段階まで視野に入れた商品設計を行っており、そこが差別化ポイントとなっています。
サステナブル容器の導入で得られる3つのメリット

サステナブル容器の導入は、「環境にやさしい」というイメージだけで語られがちです。しかし、実際には事業者にとっても大きな経営的メリットがあります。ここでは、特に注目すべき3つの利点を紹介します。
① 企業イメージとブランド価値の向上
近年、消費者の購買行動は「価格や機能だけでは選ばれない時代」に突入しています。環境に配慮しているか、社会課題に向き合っているかという姿勢が、企業や商品の信頼性を左右する重要な要素となっています。
- ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みとして評価される
- SDGsの目標達成に貢献していることを社外発信できる
- 環境意識の高い顧客層への訴求が強化できる
たとえば、パタゴニアやロクシタンのようなブランドは、環境配慮型パッケージの使用を通じて、明確なポリシーと誠実さをアピールしています。
② コストの最適化と業務効率の改善
「サステナブル=コストがかかる」というイメージを持たれがちですが、実は中長期的にはコスト削減につながるケースも多くあります。
- 容器軽量化による輸送コストの削減
- 繰り返し使える容器の採用で使い捨てコストの削減
- 簡易包装による作業効率の向上
たとえばアスクルでは、段ボールを廃止し、簡易封筒に変えることで資材コストと梱包時間を削減し、結果的に利益率向上にもつながっています。
③ 将来の法規制や市場変化への備え
サステナブル容器への対応は、将来の規制リスクを回避する保険としての役割も果たします。
- プラスチック資源循環促進法や容器包装リサイクル法など、規制は年々厳格化
- 国際市場では、環境対応が輸出や取引条件になるケースも増加
- 一度仕組み化しておくことで、変化に柔軟に対応可能
つまり今のうちから取り組むことは、長期的な競争力の確保にもつながるのです。
総合的な価値の再確認
サステナブル容器は「環境対応」という単一の視点ではなく、企業の価値創造に寄与する多面的なツールです。ビジネスの持続可能性を高める一手として、単なる流行で終わらせない取り組みが求められています。
まとめ|「5つの指針」を選定基準に、環境にも企業にもやさしい容器選びを
ここまで紹介してきた「サステナブル容器の5つの指針」は、それぞれが独立した取り組みのようでいて、環境と経済の両立という一本の軸でつながっています。
あらためて、5つの指針を振り返りましょう。
- 過剰包装の抑制
- 再使用可能な設計
- 持続可能性に配慮した原材料の使用
- 分別しやすい設計
- リサイクルしやすい構造
これらは一つひとつが重要でありながら、包括的に取り組むことで真の効果を発揮します。どれか一つだけを満たしていても、それが“サステナブル”とは限らないのです。
事業者がとるべき次のアクション
サステナブル容器を選ぶことは、単なる環境対策ではなく、経営判断のひとつです。今後、消費者の目線も、取引先の評価基準も、ますますサステナビリティに向かってシフトしていきます。
まずは自社の現状を確認し、次のような行動から始めてみてはいかがでしょうか?
- 使用中の容器がどの指針を満たしているかチェック
- サプライヤーに持続可能な代替素材の提案を依頼
- 自社ブランドでの再使用容器導入に向けた試験運用
重要なのは、完璧を目指すより、着実に前進すること。持続可能な未来は、一つひとつの選択の積み重ねで築かれていくのです。
サステナブル容器の選定は、もはや一部の“意識高い”企業だけのものではありません。全ての事業者が、社会との関係性を築き直すための“共通言語”として扱うべき重要なテーマです。
この記事が、皆さんの容器選定の新たな視点となり、環境にもビジネスにも優しい選択を後押しする一助となれば幸いです。


