環境にやさしい容器「PLA・CPLA」とは?選び方と導入事例を紹介
「環境にやさしい容器を使いたい」と考える飲食店やキッチンカーの運営者が増えています。特に、プラスチックごみによる海洋汚染や二酸化炭素(CO2)排出の問題が注目される中、使い捨て容器も“エコ”な素材へと見直されつつあります。
その中でよく耳にするのが「PLA」や「CPLA」といったバイオマスプラスチック。名前は知っていても、「それぞれ何が違うの?」「本当に環境に良いの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、PLAとCPLAの特徴と違い、そして導入の際に気をつけたいポイントをわかりやすく解説します。キッチンカーや飲食店で実際に活用している事例も交えながら、どんな場面でどちらを選べばいいのかが分かる内容になっています。
PLAとは?その特徴とメリット・デメリット

PLAとは、「Polylactic Acid(ポリ乳酸)」の略称で、とうもろこしやサトウキビなどの植物から抽出されるデンプンを原料とした、再生可能なバイオプラスチックです。見た目は石油由来のプラスチックと似ていますが、使用後は特定の条件下で分解され、自然に還る「生分解性」が特徴です。
日本国内では、冷たい飲み物用のカップや蓋、ストロー、サラダ容器などに使用されることが多く、コンビニやナチュラル系カフェでも採用が進んでいます。
PLAのメリット
- 植物由来の原料でサステナブル
石油資源に依存せず、再生可能な資源からつくられているため、持続可能な社会に貢献できます。 - 生分解性がある
工業用コンポストのような高温・高湿の環境下であれば、数か月以内に自然分解される特性があります。 - 見た目が透明で美しい
PETに似た質感をもち、透明感のある仕上がりが可能。ドリンクカップなどで中身の見える演出ができます。
PLAのデメリット
- 耐熱性が低い
PLAの最大の弱点は耐熱性で、約50℃を超えると変形してしまう可能性があります。ホットドリンクやスープには適していません。 - 日本では“ごみ分別”が課題
生分解性とはいえ、日本の一般的な廃棄環境では家庭用コンポストが整っていないため、可燃ごみとして処理されることがほとんどです。 - 屋外保管に注意が必要
高温多湿の環境下では変形や劣化が進みやすいため、保管場所には配慮が必要です。
このように、PLAは環境にやさしく透明感もある優秀な素材ですが、用途や温度に注意する必要があります。
CPLAとは?PLAとの違いと特徴を解説

CPLAとは「Crystallized Polylactic Acid(結晶化ポリ乳酸)」の略で、PLAをベースに耐熱性を高めるための加工が施された素材です。PLAはそのままでは熱に弱く変形しやすいという課題がありますが、CPLAでは分子構造を結晶化させることで、より高温に耐えられるように設計されています。
この改良によって、CPLAはホットドリンク用の蓋や、フォーク・スプーンといったカトラリー類、またテイクアウト用のホットミール容器にも幅広く活用されています。
CPLAの特徴と利点
- 高い耐熱性
CPLAはおよそ90℃〜100℃までの耐熱性能をもち、熱いコーヒーやスープにも使用可能です。これにより、PLAの用途では難しかったホット系商品の容器として活躍の場が広がります。 - マットでやわらかな質感
PLAが透明なのに対し、CPLAは乳白色または白色のマットな見た目をしており、自然素材らしいやさしい印象を与えます。ナチュラル系ブランドやオーガニック志向の飲食店でも好まれる理由のひとつです。 - 同じく生分解性を備える
PLAと同様に、CPLAも生分解性を備えたバイオマスプラスチックであり、適切な処理環境であれば自然分解が可能です。
PLAとの違いまとめ
| 項目 | PLA | CPLA |
|---|---|---|
| 耐熱性 | 約50℃まで | 約90〜100℃まで |
| 見た目 | 透明 | 乳白色・マット |
| 主な用途 | 冷たい飲料カップ、ストローなど | カトラリー、ホット用カップ蓋 |
| 加工方法 | シンプルな成形 | 結晶化処理による耐熱化 |
CPLAは、PLAの弱点を補った進化版とも言える素材です。温かい飲み物や料理にも安心して使えるため、メニューの幅が広い飲食業には心強い選択肢となります。
PLA・CPLA製容器を選ぶ際の注意点

PLAやCPLAは環境にやさしい素材として注目されていますが、「エコだからといって、どんな場面でも安心して使える」というわけではありません。実際に導入を検討する際には、以下のような点に注意しておく必要があります。
① 廃棄方法に注意:日本では「可燃ごみ」扱いが一般的
PLAやCPLAは工業用コンポスト施設が整っている欧米などでは、堆肥として処理されるケースもありますが、日本国内ではそのような処理環境がほとんど整っていません。そのため、多くの自治体では「可燃ごみ」として処理されます。
つまり、「生分解性=土に還る」という認識でそのまま自然に捨ててしまうと、かえって環境負荷を与える可能性もあるのです。エコ素材であっても、最終的な処理方法との整合性は確認しておきたいポイントです。
② 生分解の条件は限定的
PLAやCPLAが生分解するには、「高温」「高湿」「酸素の供給」がそろった特定の環境が必要です。家庭用コンポストでは分解に非常に時間がかかる、または分解しきれないこともあるため、実用面での“エコ効果”を過信しすぎないことが大切です。
③ 消費者への案内も忘れずに
見た目や手触りが従来のプラスチックと似ているため、「環境配慮型の素材である」ことが消費者に伝わらないケースもあります。カトラリーやカップに「PLA」や「CPLA」のマークがついている場合には、その意味をPOPなどで説明することで、ブランド価値や環境意識の高さを訴求するチャンスにもなります。
導入を「エコだから」で終わらせず、素材の性質や廃棄の仕組みまで含めて把握しておくことで、より納得感のある選択ができます。
キッチンカーや飲食店での使い分けのポイント

PLAやCPLA容器は、エコ志向の飲食ビジネスにとって心強い味方です。ただし、それぞれの特性に合った“適材適所”の使い分けが重要になります。用途を誤ると、品質や安全性に関わるだけでなく、顧客満足にも影響します。
ここでは、キッチンカーや飲食店が実際の現場でどう使い分けるべきか、具体的に見ていきましょう。
① 冷たい飲み物・サラダにはPLAを
PLAは透明感があり、冷たいドリンクやサラダ、フルーツなどの“見せる食品”に最適です。耐熱性が低いため、氷の入った飲料や冷菜などの提供に限定して使うことで、変形や漏れのリスクを避けることができます。
使用例:
- アイスコーヒーやスムージーのカップ
- フルーツボウル、サラダ用容器
- 冷製スープのテイクアウトカップ
② 温かい飲み物・料理にはCPLAを
CPLAは高温に強いため、コーヒーやスープ、ホットミールなどのテイクアウト容器にぴったりです。特に、ホットドリンク用のカップ蓋や、持ち帰り用のカトラリー(スプーン・フォーク)に多く使われています。
使用例:
- ホットコーヒーや紅茶の蓋
- 温かい丼ものやカレーの容器
- ラーメン・スープ用のスプーン
③ ブランドイメージの一部として活用
エコ容器を使うことは、ただの機能的な選択にとどまらず、飲食店のブランド姿勢を表現する手段にもなります。自然派やオーガニックをテーマにした店舗では、あえてマットな質感のCPLA製品を選ぶことで、「環境配慮を大切にしている店」という印象をお客様に与えることができます。
また、容器そのものに「PLA」や「CPLA」と記載されていることもありますので、そのマークの意味をPOPやメニュー表で簡単に紹介するのもおすすめです。
このように、PLAとCPLAをシーンに合わせて使い分けることで、提供の安全性とお客様の満足度を両立させることができます。
PLA・CPLA製品の導入事例とユーザーの声

実際にPLAやCPLA製品を導入しているキッチンカーや飲食店では、「エコ対応」というだけではない、さまざまなメリットや課題が見えてきています。ここでは、いくつかの実例をもとに、現場のリアルな声をご紹介します。
① カフェ系キッチンカー:見た目とブランドイメージでPLAカップを採用
都内でカフェスタイルのキッチンカーを運営するA店では、アイスドリンクにPLAカップを使用しています。決め手は「中身が見える透明感」と「環境への取り組みをお客様に伝えやすいこと」だったそうです。

オーガニックな素材やフェアトレードコーヒーを使っているので、容器も環境にやさしいものにしたかった。お客様にも“意識高いお店”という印象を持ってもらえていると思います。
このように、エコ素材を取り入れることで、商品のコンセプトをより明確に伝えることができる点が評価されています。
② ランチボックス専門店:ホット対応でCPLAカトラリーを導入
オフィス街で人気のテイクアウト弁当店Bでは、温かい惣菜に合わせてCPLA製のスプーンとフォークを導入。従来の木製カトラリーでは「口あたりが悪い」「割れやすい」といったクレームがあったため、CPLAに切り替えたところ、使い勝手が向上したとのことです。

お客様から“ちゃんとした素材ですね”という声もいただき、リピート率が上がったように感じます。見た目にも高級感があるので、ブランドの格も上がった印象です。
このように、実際の導入例では「見た目」「使いやすさ」「顧客満足」「処理方法」など、それぞれの立場に応じた工夫がされており、PLA・CPLAは単なる素材選びではなく、店舗の価値づけにもつながっています。
まとめ
環境配慮型の容器として注目される「PLA」と「CPLA」。どちらも植物由来の原料から作られたバイオマスプラスチックであり、生分解性を持つ点では共通しています。しかし、それぞれに異なる特徴や適した用途があるため、理解して使い分けることが大切です。
PLAは、透明で見た目も美しく、冷たいドリンクやサラダなどにぴったり。一方で、CPLAは耐熱性に優れており、ホットコーヒーや温かい惣菜の容器、カトラリーとして安心して使用できます。
導入にあたっては、「廃棄方法」「使うシーン」「顧客への伝え方」などにも目を向けることで、単なるエコ素材としてではなく、ブランド戦略の一環として活かすことができるでしょう。
いま飲食業界では、素材そのものがメッセージを持つ時代です。だからこそ、「PLA」「CPLA」という選択が、お客様とのコミュニケーションを深め、店舗の魅力を一段と引き上げるきっかけになるはずです。


