業務用食品容器のリサイクルマーク徹底解説|選ぶ・使う・捨てるを正しく」
業務用食品容器を選ぶ際に、見逃せないのが「リサイクルマーク」。
見たことはあるけれど、意味まではよく知らないという方も多いのではないでしょうか?
この記事では、リサイクルマークの種類や意味、容器選びの際のチェックポイント、そして事業者として知っておくべき分別・リサイクル対応まで、実践的に解説します。
食品関連業に携わるすべての方にとって、環境配慮は今や当たり前の時代。この記事を通じて、より賢く・適切に業務用容器を選び、エコ活動にも一歩貢献しませんか?
リサイクルマークとは?基本のキホン

そもそもリサイクルマークとは
リサイクルマークとは、「この製品や包装資材は再資源化が可能です」ということを示すために、商品や容器などに表示されるマークのことです。日本では1990年代以降、環境配慮の意識向上とともに法整備が進み、包装容器リサイクル法(容器包装リサイクル法)に基づき、多くの製品にリサイクルマークの表示が義務づけられるようになりました。
このマークは、消費者や事業者が適切に分別し、リサイクルへとつなげるための重要な「目印」となります。とくに業務用食品容器では、使用量や使用頻度が多いため、このマークの理解は環境対応に直結するだけでなく、コスト削減や企業イメージの向上にもつながります。
日本で使われている主なリサイクルマーク一覧
日本国内で一般的に使われているリサイクルマークは、以下のようなものがあります。
- プラスチック製容器包装(プラマーク)
- 紙製容器包装(紙マーク)
- ペットボトル(PETマーク)
- アルミ缶(アルミマーク)
- スチール缶(スチールマーク)
- ガラスびん(色別にマーク)
- 紙パック(アルミ付き/無しで別マーク)
これらのマークは、素材や再利用の方法ごとに分類されており、素材ごとに分別を行うためのガイドとなっています。
なお、業務用の包装資材では、家庭向けと異なり複合素材や特殊加工されたものも多く見られるため、マークだけでなく「素材表示」もあわせて確認することが求められます。
業務用食品容器によく使われるマークの種類
業務用食品容器で頻繁に見かけるのは、以下のマークです:
- プラマーク:最も一般的。使い捨ての弁当容器、カップ、トレーなどに広く使用。
- 紙マーク/紙パックマーク:紙製の弁当箱や蓋、持ち帰り用の紙袋に。
- PETマーク:透明容器や飲料容器に使用。冷蔵耐性が高く、リサイクル効率も良い。
- アルミマーク:高級感を出す仕出し容器などに使われることも。
- その他(ガラスびんやスチール缶):調味料、ソース類など、内容物によっては該当。
事業者が容器を選ぶ際は、こうしたマークの意味と回収のしやすさを理解しておくことで、後々の分別・廃棄の手間を軽減できます。
また、リサイクルマークが付されていない容器も存在しますが、それは必ずしも「リサイクル不可」という意味ではなく、法的な表示義務がないか、個別の業務契約に基づく仕様である可能性があります。こうしたケースでも、素材表示や自治体のルールと照らし合わせて判断することが重要です。
業務用食品容器でよく見られるマークの読み方

「プラ」マークとは?
業務用食品容器で最も多く目にするリサイクルマークが「プラ」マークです。これは、プラスチック製の容器や包装資材に表示されるもので、容器包装リサイクル法により表示が義務付けられています。
「プラ」マークのポイントは、中身ではなく容器の素材が対象であること。たとえば、サラダやパスタを入れる透明容器、持ち帰り用のフタ付きトレー、使い捨てのプラカップなどが該当します。
ただし、プラ製品すべてがリサイクル対象というわけではなく、容器包装として使用されたもののみが対象です。つまり、まな板やバケツなどの道具類は該当しません。この違いを理解しておくことで、誤った分別を防げます。
「紙マーク」と「紙パック」マークの違い
紙素材の容器に見られるのが、「紙」マークと「紙パック」マークです。一見すると同じように思えますが、対象となる製品や再資源化の方法に違いがあります。
- 紙マーク:段ボールや厚紙製の包装、弁当箱の仕切りなど、紙素材の容器包装が対象。
- 紙パックマーク:牛乳パックやジュースパックなど、液体を入れるために内側がラミネート加工されたものが該当。
また、「アルミ付き紙パック」と「アルミなし紙パック」でマークが異なる場合もあり、回収ルートが分かれています。仕入れる際には、どのマークが付いているかを確認し、回収業者や自治体の分別ルールと整合が取れるかをチェックすることが大切です。
アルミ・スチールなど、金属系マークもチェック
業務用弁当や仕出し料理、菓子製品の容器などでは、アルミ容器やスチール缶が使用されることがあります。これらには、以下のマークが表示される場合があります:
- アルミマーク:銀色の丸形トレーや蓋などに多く使われ、軽量で耐熱性があるのが特徴。
- スチールマーク:缶詰やドリンク缶などの密封容器に使われます。
金属系容器はリサイクルの価値が高いため、適切に分別することで資源としての再利用が促進されます。ただし、油や食品残渣が残っているとリサイクル不可になることもあるため、洗浄や乾燥の対応も重要です。
「PET」マークは容器にどう使われている?
「PET(ペット)」マークは、ポリエチレンテレフタレートという素材を使った容器に表示されるマークです。代表的な使用例はペットボトルですが、業務用でも以下のような場面で見かけます。
- サラダ用の透明容器
- デザートカップ
- 冷蔵保存向けのクリアカップ
PET素材は透明性・耐寒性に優れており、食品の見た目を美しく見せるためのパッケージとしても人気です。また、リサイクルルートが比較的整っているため、環境配慮型の商品としても注目されています。
一方で、高温に弱いため電子レンジ加熱には不向きである点や、似た見た目の他素材と混同しやすい点にも注意が必要です。特に現場スタッフが分別する際に、見分けがつきにくいこともあるため、容器仕入れ時に素材表示の明確な商品を選ぶと安心です。
容器選びの際に気をつけたいポイント

再生資源としての扱いやすさ
業務用食品容器を選ぶ際には、見た目や価格だけでなく、リサイクルのしやすさ=「再生資源としての扱いやすさ」にも注目すべきです。具体的には、以下のような点がポイントになります:
- 単一素材で作られている容器:異素材が貼り合わされている複合容器は、分別が困難なためリサイクル率が下がります。
- 素材表示が明確な商品:容器本体や包装に、材質とリサイクルマークがはっきりと表示されていることが重要です。
- 自治体・業者が回収しやすい素材:PETやPP(ポリプロピレン)などは、回収ルートが整っており、再利用もしやすい傾向にあります。
再生しやすい容器を選ぶことで、廃棄コストの削減や、企業の環境対策としての取り組み姿勢を示すことにもつながります。
自治体ごとの分別ルールの違いに注意
リサイクルマークが付いているからといって、どこでも同じように分別できるとは限りません。というのも、日本では自治体ごとにごみの分別ルールが異なるからです。
たとえば、ある地域では「プラ」マークの容器をすべて「プラスチックごみ」として回収しているのに対し、別の地域では「容器包装プラスチック」と「可燃ごみ」に分けている場合もあります。
そのため、複数の店舗を展開している企業やチェーン店では、
- 拠点ごとの分別ルールの把握
- 現地スタッフへの分別マニュアルの周知
- 分別ミスによるクレームリスクの回避
といった対応が必要不可欠です。容器選定の段階から、地域ごとのルールにフィットする素材かどうかを確認しておくと、後のトラブル防止になります。
回収・リサイクル可能か、仕入れ先での確認方法
意外と見落とされがちなのが、「容器が実際に回収・リサイクル対象になっているか?」という点。たとえリサイクルマークが付いていても、以下のようなケースではリサイクル不可になる可能性があります。
- 油汚れや食品カスが残っている
- リサイクル対象外の加工(着色、特殊印刷)がされている
- 自治体や業者が当該素材を回収していない
このため容器の仕入れ時には、販売業者やメーカーに以下の点を確認しておくことが重要です。
- 素材とリサイクルマークの種類
- 実際のリサイクル対象であるかどうか
- 分別・洗浄のガイドラインの有無
- SDGs対応や環境認証の取得状況(例:バイオマスマーク、エコマークなど)
こうした確認を行うことで、容器導入後のオペレーションがスムーズになり、社内外の信頼性向上にもつながります。
使用後の分別・廃棄の実務ポイント

現場でできる分別ルールの徹底
容器を正しく選んでも、使用後の分別や廃棄の運用が適切でなければ、リサイクルは機能しません。とくに業務用の現場では、スタッフごとに作業フローや意識が異なるため、以下のような具体的な工夫が必要です。
- ごみ箱を素材別に複数設置する
- 容器に応じた分別ルールをポスターなどで明示
- 新人スタッフへの分別教育を徹底
特に「プラ」と「可燃」の見分けがつきにくい素材や、ラミネート加工された紙容器などは誤分別の温床になりがちです。そうした場面では、現物サンプルを使った実地指導や、容器写真入りの分別マニュアルの作成が効果的です。
また、複数店舗を持つ場合は、本部からの統一的な分別方針の配布も有効。店舗による対応のばらつきを防ぎます。
洗浄・異物除去はなぜ必要?
リサイクルを成功させるために、もう一つ大切なのが「洗浄」と「異物除去」です。たとえば以下のようなケースでは、素材自体は再資源化可能でも回収段階でリジェクト(除外)される可能性が高くなります。
- 食品の油が容器にべっとり残っている
- ソースやスープが乾いてこびりついている
- 汚れた割り箸や輪ゴムなどが混入している
こうした異物や汚れは、リサイクルラインでのトラブルやコスト増加につながるため、回収業者が受け入れを拒否することもあります。
もちろん、業務の現場ですべてを完全に洗浄するのは難しいですが、
- 使用後に軽く水で流す
- 食品カスを取り除いてから廃棄する
- 洗い場に「リサイクル前洗浄」専用のバケツを用意する
といった「ひと手間」が、リサイクル実現率を大きく高めます。
外部業者と連携したリサイクル体制の構築
大量の容器を扱う業務用施設では、分別や回収を社内だけで完結させるのは困難です。そこで重要になるのが、外部の回収業者やリサイクル企業との連携です。
ポイントは以下の通りです。
- 自治体と民間業者、どちらに回収を委託すべきかを明確にする
- 回収スケジュールや容器の出し方を事前にすり合わせておく
- 容器メーカー・卸業者から「使用済み容器回収」サービスが提供されている場合もあるので確認する
また、最近では企業としての環境貢献度を「見える化」できるサービス(例:CO₂削減量の可視化、SDGsレポート発行など)も登場しています。こうした外部との連携をうまく活用することで、ただのごみ処理から一歩進んだ「環境対応型オペレーション」へと発展させることができます。
まとめ:容器選びは「コスト」だけでなく「環境配慮」も意識

業務用食品容器の選定において、どうしても「コスト」「使いやすさ」「見た目」の3点に注目しがちです。もちろん、それらはビジネスにおいて非常に重要な要素ですが、今の時代、それだけでは不十分です。
リサイクルマークの理解を深め、素材や構造、分別のしやすさまでを考慮して容器を選ぶことで、
- 環境への負荷を減らせる
- 廃棄コストの最適化が可能になる
- 顧客や取引先に対して「環境配慮企業」としての姿勢を示せる
といった多くのメリットがあります。
また、容器そのものを「環境配慮型」にするだけでなく、使用後の運用体制や回収フローの整備まで含めて初めて、持続可能な取り組みとして評価されます。
企業のブランド価値を高めたい。
社内でSDGsの取り組みを進めたい。
仕入れの段階からエコを意識したい。
そう考える事業者の皆さんには、リサイクルマークの正しい理解から始める容器選びを、ぜひ実践していただきたいと思います。
小さな一歩が、社会や環境、そして自社の未来を大きく変える力になるはずです。


